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153 介護に向いている者

last update آخر تحديث: 2025-10-14 14:27:11

「あおいちゃん、お疲れ。頑張ったね」

 オムツ交換が終わり、休憩室で水分補給スタッフが声をかけてきた。

「はいです……」

「疲れちゃった? 顔色悪いよ」

 あおいにペットボトルを渡すが、あおいは手にしたまま飲もうとしなかった。

「駄目だよ、ちゃんと水分補給しておかないと。言ってる間にまた次の巡回なんだから」

「……みなさん、毎日これを続けてるのですか」

「そうだよ。あ、そうか。あおいちゃん、うまく出来なかったから落ち込んでるんだ」

「それも……はい、ありますです」

「そんなの気にしない気にしない。だってあおいちゃんって、有料(有料老人ホーム)で働いてるんだよね。だったら慣れてないだろうから、仕方ないよ」

「そうなんですけど……」

「こういうのは慣れだから。私も、初めの頃は全然うまく出来なくってね、いつも落ち込んでたよ。でも毎日やってる内にこつがつかめてきて、いつの間にか出来るようになってた。こんなの経験だけだから」

「はいです……」

「もおー、あおいちゃん、落ち込みすぎ!」

 そう言ってペットボトルを取り上げ、栓を取って無理矢理口に押し込んだ。

「ほら、ちゃんと飲んで」

「……」

 スタッフの言葉に力なく笑う。

「うっ……」

 あおいが突然咳き込んだ。

「ごほっ、ごほっ」

 水分が口に入った途端、口いっぱいに妙な感覚が沸き上がってきた。

 それは、鼻孔の奥にこびりついた尿臭だった。

「……」

 初めての感覚に違和感を覚え、戸惑うあおい。そんなあおいを見て、スタッフがまた笑った。

「結構きついでしょ」

「分かりますですか」

「そりゃあ分かるよ。私もそうだったから。その匂いね、家に帰ってからもずっと残ってるから」

「そうなんですか」

「うん。利用者さんってね、色んな疾患を持ってるでしょ? だから飲んでる薬も色々で、それが尿や便に独特の匂いをつけてるの。まあ、一種の職業病かな、これも。この仕事をやめない限り、ずっとそうだから」

「じゃあ今も」

「多分ね。でも毎日のことだから、知らない間に気にもしなくなっていく。いつも新人さんが来た時にこの話をするんだけど、その時に、『そう言えばそうだった』って思い出す程度になってる。ある意味、これが自分にとっての日常になるから」

「みなさん、こんなことを毎日されてるんですね……本当、すごいです」

「でもね、ここはよそより全然ましだよ。作
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